ユネスコが「学校でのスマホ禁止」を呼びかける理由

現在、スマートフォンの利用を禁止している学校は4分の1以下です。
Image: Unsplash/2y.kang
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テックとイノベーション
- スマートフォンは生徒の集中力を削ぎ、学習に悪影響を与えるとして、ユネスコは、学校での使用を禁じるよう勧告しています。
- テクノロジーは、学習パフォーマンスを向上させる上で有益な場合にのみ、教育現場に導入されるべきでしょう。
- 世界経済フォーラムの「デジタルセーフティのためのグローバルコアリション」は、オンライン環境をより安全なものにするために取り組みを進めています。
ユネスコは、学習活動の妨げにならないよう生徒の学校でのスマートフォンの使用を禁止する必要があると、最新の報告書で警告しています。
国連の教育科学文化機関であるユネスコは、近くに置いているスマートフォンに通知が届くだけで生徒は気が散り、その後学習に集中し直すのに最大20分かかるとする研究もあるといいます。
国際的な学習到達度調査(Programme for International Student Assessment)のような大規模な国際テストデータは、過剰なテクノロジーの使用は生徒の成績に悪影響をもたらすことを示唆していると、ユネスコの「世界教育モニタリング報告書(Global Education Monitoring report)」では強調されています。

スマートフォンが近くにあるだけで学習に悪影響を及ぼすことは、14カ国でわかっています。ユネスコの報告書では、ベルギー、スペイン、英国で、学校にスマートフォンの持ち込みをさせないようにしたところ、学習パフォーマンスが向上したという調査結果も示されています。しかし、スマートフォンの使用を禁止している学校は4分の1にも満たないこともわかりました。
生徒の健康や社会全体へ及ぼす害を防ぐため、教育現場でのテクノロジーの使用には明確なガイドラインが必要だと、ユネスコは主張します。そして、各国は、学校で使用してよい機器としてはいけない機器を明確に定める必要があるともしています。
テクノロジーの過剰な使用がもたらす弊害
テクノロジーは、学習パフォーマンスの向上に役立つ場合にのみ学校で使用されるべきであると、同報告書は強調しています。「特定の場面において学習をサポートすることができるテクノロジーもありますが、過剰または不適切に使われた場合には、それは悪影響をもたらすものになります」
新型コロナウイルスの感染拡大が起きて以来、さまざまな場面で学校にテクノロジーが流れ込んでいますが、このようなテクノロジーは、教育と学習の基礎となる人間的なつながりの構築をサポートするものであり、決してそれらに取って代わるものであってはなりません。
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デジタル技術は、集中力を削ぐだけでなく、人との関わり合いの機会を奪い、規制がなければプライバシーを侵害し、憎悪をかき立てる可能性があると、同報告書は警告しています。教育におけるデータプライバシーを法律で明確に保証している国はごくわずかです。そして、パンデミック下でオンライン教育を提供した政府の大半は、子どもの権利を危険にさらしたり、侵害したりするような使い方を助長したといいます。
同報告書に用いられた調査によれば、スクリーンタイムが長いほど、ウェルビーイング(幸福)、好奇心、自制心が低下し、情緒的安定性、不安、うつ病の診断が増加することが明らかになっています。
中国のサイバースペース管理局は、18歳未満の子どもには、1日2時間までしかスマートフォンを使用させるべきではないとしています。さらに、規制当局は、18歳未満のユーザーのインターネット接続を午後10時から午前6時まで制限する「未成年モード」プログラムの実施を提案しており、その場合、時間制限はプロバイダーが設定することになります。

テクノロジー格差
世界的に見て、携帯電話の所有率とテクノロジーへのアクセスは均一ではなく、このことが学習の不平等を悪化させています。世界中の10代より上の世代の人々の約4分の3が携帯電話を所有していますが、低所得国ではその割合は半数以下です。また、男性に比べて女性の携帯電話の所有率は9%少ないとされています。
世界中の小学校のうち、インターネットに接続できるのはわずか40%で、貧困国の教育のためにその接続を維持するには、1日10億ドルのコストがかかると同報告書は指摘しています。しかし、仮に接続を維持できたとしても、過度のスクリーンタイムが与える影響についての調査結果を考慮すると、デジタル技術が常に効果的な学習を提供する最良のツールであるかについては、まだ疑問が残されています。
世界経済フォーラムの「デジタルセーフティのためのグローバルコアリション(Global Coalition for Digital Safety)」は、オンライン上の有害なコンテンツや行為に対処するための官民協力を加速させることを目指し、リーダーたちを結集しています。同コアリションは、安全で信頼できる包括的なオンライン環境の構築を支援することを目的とした「デジタルセーフティに関するグローバル原則(Global Principles on Digital Safety)」を策定し、取り組みを進めています。
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