気候変動の影響を最も受けやすいコミュニティの、レジリエンスを強化する方法

気候変動により、日常化する異常気象の発生。
Image: Misbahul Aulia on Unsplash
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社会と公平性
- 今こそ、レジリエントなコミュニティ、つまり気候変動に起因する課題に対処する準備の整ったコミュニティを提唱し、作り上げることに力を尽くさなければなりません。
- コミュニティのレジリエンスを高めるための対策を事前に講じることで、気候変動がもたらす影響を軽減できるだけでなく、事前に防ぐことが出来る可能性も高まります。
- コミュニティのレジリエンスを積極的に高めるために、現状に満足することをやめ、コミュニティメンバーと協力して長期的な取り組みを行い、彼らが立ち上がるために必要なリソースを確実に手にすることができるようにしましょう。
異常気象は目新しいものではありませんが、その発生頻度は高まり、破壊レベルが上昇しています。これまでの歴史の中で、私たちはさまざまな成功体験をもとに異常気象に適応してきました。しかし、予防的なアプローチが必要なときであっても、私たちの取り組みは事後対応的で、それに気づくのがあまりにも遅いということが多々あります。政策立案者は、人が環境に与える影響を軽減するための条件について交渉や公約を実行し続けていますが、私たちは、レジリエント(強靭)なコミュニティ、つまり、気候変動に起因する課題に対処する準備の整ったコミュニティを提唱し、作り上げることに力を尽くさなければなりません。コミュニティを一段とレジリエントなものにするための対策を事前に講じることで、気候変動がもたらす影響を軽減できるだけでなく、事前に防ぐことが出来る可能性も高まります。
私たちは、誰もが安全で健康的な環境で暮らす権利を持っています。災害が発生すると、その余波がもたらす影響は被災した地域の外にも広く及びます。数百万の人々の健康、安全、安定が危機にさらされる可能性があり、住居の基盤や、飲料水へのアクセス、必要な物資やサービスを供給するための耐久性のあるインフラなど、さまざまな面に影響が及びます。常に最も大きなインパクトを受けるのは、社会的に疎外されたコミュニティで、復興に向けた闘いにおいても不平等な負担を強いられます。
ミクロ、マクロの両レベルで影響を持つ気候変動
気候変動は、ミクロ、マクロの両レベルにおいて、環境、経済、公衆衛生の危機を深刻化させ、グローバル経済の安定を脅かしています。2022年には、異常気象により推定870万人が避難を余儀なくされ、この数は2021年から45%増加しています。また、58カ国で2億5,800万人が食料不安に直面しました。「環境の変化、紛争、社会不安」により、現在から2050年までの間に約10億人が避難民になる脅威にさらされています。こうしたさまざまな地球規模課題が引き起こす現象を過小評価することはできません。
見通しは暗いかもしれません。それでも、進むべき方向を変え、新たな道を切り拓く機会は多くあります。未来の世代に与えられる安定と可能性は、私たちが何を選択して行動するか、またはしないかにかかっています。優れた行動計画の中心には、深刻な不平等と高度に階層化された社会を生み出してきた障壁を取り払い、すべての人の健康、教育、経済的モビリティを改善する決意が必要です。
私たちは、積極的にコミュニティの今を支援することを選択し、明日のレジリエンス(強靭性)を高めるための基盤づくりを行っています。以下に、最も効果的に基盤をつくる方法を紹介します。
・積極的にレジリエンスを高めるためには、洞察力を持ち、過去の経験から学び、これまでにない方法でマクロ、ミクロ両レベルの関係者と連携する必要があります。
・コミュニティにおける機会と参加を拡大するための基盤を築くべきです。
・ヘルスケア、インフラ、イノベーション、職業訓練への投資や、より健康で安全、かつ社会に貢献する生活を支援するためのリソースへの投資を、取り組みの中心とすることが重要です。
・コミュニティとの協力が極めて重要です。気候危機に対するソリューションには、コミュニティのあらゆるレベルの意見や視点が反映されることが重要です。人々の意見が軽視されたり無視されたりすれば、コミュニティ重視の取り組みを改善する努力は実を結びません。マギス(2010)が指摘するように、コミュニティ視点は、変化に直面したコミュニティを繁栄させるためのリソースの開発と活用に、コミュニティ関係者がエンゲージすることが重視されます。
協力が鍵
コミュニティにおいて、気候変動危機が顕在化していく方法には大きな格差が付随するということを、私たちは目の当たりにしてきました。コルウェル(2015)は、「レジリエントなコミュニティには社会的結束力と適応力があり、災害や打撃への対応に集団で取り組む力を持っている」と述べています。
米国では、ユナイテッド・ウェイの211コールセンターが、住宅や食事、ヘルスケア、災害救援など、さまざまな緊急支援サービスを求める個人や家族のために、24時間365日対応のコミュニティ危機に対する秘密厳守のヘルプラインとして機能しています。211のネットワークは毎日約5万件の電話を受けており、最も重要なことは、通話に対応する人が、サービスを利用するこれらのコミュニティとつながっているということ。このネットワークの目指すところは、隣人が最も必要としているときに、隣人のそばにいることです。
隣人が隣人を助けることは、レジリエントなコミュニティの極めて貴重な財産ですが、明日への備えに利用可能な商品やサービスを拡充するためには、外部の関係者も必要です。グローバルな重要課題に対処する際には、官民と市民社会の関係者がコミットして連携することが非常に重要です。パートナーシップにより、世界で認知された影響力のある組織が変革を促し、善のために力を合わせることができます。
官民連携がレジリエントなコミュニティを支える
官民連携は、レジリエントなコミュニティのインフラと、環境のサステナビリティを促すリソースへの公平なアクセスを支援する政策を提唱し、実施のための協力の機会を提供します。慈善活動は、共通の善を推進し、最も必要とする人々のためにより明るく公平な未来をつくり出すことに役立つ、共同の手段です。惜しみない寄付、特に「制約のない」寄付は、恩恵を受けるコミュニティに信頼を生み、コミュニティのために最も効果的に資金を活用する権限をコミュニティメンバーに与えます。寄付というアイデアはシンプルですが、実践においては急進的なものです。
この数年間に経験した難題と混乱から立ち上がる中で、一層強く、安全かつ平等なコミュニティづくりのための手段を、コミュニティに与えなければなりません。コミュニティに影響を与える変化が起こるまでのプロセスは長く、長期的なサポートとコミットメントが必要になります。災害対応をめぐる対話を変えることに、力を注ぎましょう。単に再建し、通常の生活を取り戻すことにとどまらず、歴史的に社会から疎外されてきた人々のスペースをつくり、経済的モビリティと機会を促進し、健康格差を縮小し、コミュニティの全てのメンバーが繁栄に必要な手段を確実に持てるような、新しい時代と新しい社会を切り拓くことを目指しましょう。コミュニティのレジリエンスを積極的に高めるために、現状に満足することはやめ、コミュニティメンバーと協力して長期的な取り組みを行い、彼らが立ち上がるために必要なリソースを確実に手にすることができるようにしましょう。
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