気候危機が、仕事と労働者に与える3つの影響

山火事は大気汚染を悪化させ、呼吸器系疾患の発症リスクを高めます。
Image: Unsplash/Patrick Perkins
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- 2030年までに、世界の総労働時間の3.8%が、気温上昇による影響で失われる可能性があります。
- 大気汚染の悪化、病気を媒介する害虫、洪水、山火事なども労働者に影響を与え、雇用の喪失につながります。
- しかし、世界経済フォーラムの「仕事の未来レポート2023」は、持続可能なエネルギーへの世界的な移行と気候変動への適応には、純雇用創出効果が期待できるとしています。
もしあなたが、温度管理された快適なオフィスビルの部屋でこれを読んでいる場合、暑さによるストレスを感じることはあまりないでしょう。
しかし、国際労働機関(ILO)によると、わずか7年のうちに、世界の総労働時間の3.8%が、気温上昇による影響で失われる可能性があります。これは、フルタイム労働換算で1億3,600万人分の雇用に相当し、世界の経済損失は2兆4,000億ドルに達すると試算されています。
主に影響を受けるのは、オフィスワーカーだけではなく、屋外労働者、緊急対応要員、高温の屋内環境で働く人々です。
労働者たちが直面しているのは酷暑だけではありません。米国環境保護庁(EPA)によると、悪化する大気の質、病気を媒介する昆虫、洪水、山火事など、気候危機による影響も、労働能力を大きく制限します。デロイトは、米国の1,300万人以上の仕事が、極端な気候変動や経済変動の影響に対して非常に脆弱であるとしています。
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気候危機が職場に及ぼしている、また将来及ぼすであろう3つの影響を紹介します。

気候危機が労働者の健康に与える影響
米国労働統計局によると、2021年には、米国で熱ストレスによる労働者の死亡事例が36件発生しました。また、米国の非営利団体KFFは、6,500万人以上の労働者が気候関連の健康リスクがある仕事に従事していると推計しています。
EPAは、こうした気候関連の危険が健康に与える5つの主要な影響を特定しています。
熱関連の健康障害 – 極端な暑さにさらされる労働者にとって、熱中症や熱疲労が危険であることは明らかですが、高温下での作業による疲労もリスクとなります。疲労は作業ミスの発生率を高め、一部の仕事では負傷や死亡につながる可能性があります。
呼吸器疾患 – 気候危機が深刻化するにつれ、大気の質は悪化します。増える山火事や、干ばつによるほこりが、有害物質発生させ大気を汚染するためです。また、気温の上昇で春と夏の長さが変わり、花粉症や喘息などを持つ屋外で働く労働者の症状を悪化させるでしょう。
身体とメンタルへの影響 – 消防士や医療従事者など最前線の現場で働く人々は、異常気象への影響に対処する頻度が高まり、身体的および心理的負担が増すでしょう。
病気 – 気温の上昇に伴い昆虫が増加し、蚊やダニを含む伝染病を媒介する昆虫による危険な感染症が増えるでしょう。
農薬への影響 – 昆虫が増加すると、より多くの農薬が使用されることになり、有毒な化学物質にさらされる農業労働者に影響が及ぶでしょう。
なぜ、気候危機が生産性の低下を招くのか
研究によると、気温が24〜26°Cを超えると労働生産性が低下することがわかっています。さらに、国際労働機関(ILO)は、33〜34°Cの環境では、肉体労働を要する仕事の生産性は半減するとしています。
気温の上昇だけでなく、気候関連がもたらす健康リスクは、大気汚染による健康状態の悪化、異常気象のストレスによるメンタルヘルスの悪化、害虫関連の病気の増加などにも及びます。
そして、気候危機によるこうした影響を最も受けるのは、グローバルサウスと低所得国です。ランセット誌に掲載された研究は、サハラ以南のアフリカ、南アジア、東南アジアは、気候危機による労働生産性低下のリスクが最も高いとしています。
気候危機が仕事に与える影響
ILOは、洪水、干ばつ、山火事、ハリケーンなどの極端な気象現象は、事業資産、交通、産業・農業インフラに損害を与え、雇用喪失をもたらすと警鐘を鳴らしています。
コマーシャルリスクコンサルティング会社AONによると、気候変動関連の事象は、2022年には、グローバル経済に3,130億ドルの損失をもたらします。これは、21世紀の平均値を4%上回っています。
しかし、世界経済フォーラムの「未来の仕事レポート2023」では、持続可能なエネルギーへの世界的な移行と気候変動への適応には、純雇用創出効果が期待できると、明るい兆しが示されています。
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