雇用創出を後押しする、8つの地球規模課題

優れた雇用創出の必要条件は雇用の「質」です。
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働き方の未来
- リーダーたちは、人口動態の変化、雇用の置き換え、AIがもたらす労働市場の課題と機会に対処する必要があります。
- 各国政府と企業は、中小企業の発展、インフラ、グローバル貿易、ヒューマンキャピタル(人的資本)に投資することで、さらなる雇用創出を後押しすることができます。
- 社会と経済にプラスの影響を及ぼすには、新たに創出される雇用が「良い仕事」でなければなりません。
さまざまなグローバルなトレンドと課題に対応するために、産業、国、地域を超えた「良い仕事」を創出する必要性が高まっています。「雇用創出の未来に関するグローバル・フューチャー・カウンシル(Global Future Council on the Future of Job Creation)」は、雇用創出のエコシステムを明確にするため「ストラテジック・インテリジェンス・トランスフォーメーション・マップ(Strategic Intelligence Transformation Map)」およびブリーフィング・ペーパー「世界の雇用創出を形成し推進する主要課題(Key Issues Shaping and Driving Global Job Creation)」の中で、雇用創出の形成と推進に影響を与えるグローバルな主要課題をマッピングしました。
雇用創出の必要条件は仕事の「質」
うまく機能する社会にとって、市民が自分自身とその家族を支えるための雇用機会を確保することは必要条件です。しかし、すべての雇用が「良い仕事」だとは限りません。「良い仕事」とは、労働時間が安定していて予測可能なものであり、労働者が安全で評価・サポートされていると感じることができ、学習と能力開発の機会があり、彼らに影響がある決定への発言権が与えられている、質の高い雇用形態のことです。これは、労働者だけでなく、企業や経済全体にとっても有益です。「良い仕事」への投資は、雇用に関する短期的ショックを吸収し、社会経済をよりレジリエント(強靭)にします。雇用の質を確保するには、最低限、結社の自由、社会的対話、団体交渉に基づく強固な労使関係が必要です。
いくつかの世界的な潮流は、労働市場に新たな機会を提供していると同時に、グローバルな規模での雇用創出の必要性を生んでいます。
労働市場アウトカムの多様化と労働移動
労働市場のアウトカムは多様化しています。一部の高所得国が労働力不足に直面する一方、中低所得国の雇用水準は、最適とは言えないレベルまで下がっています。この状況が、人口動態の変化によりさらに深刻化しているのです。人口が拡大している多くの開発途上国や新興国では、若い人材が労働市場に参入してくるため、新たな雇用の必要性が生じています。一方、多くの高所得国では急速に高齢化が進み、労働力が逼迫。労働移動(離転職)は、異なる地域間で発生する失業や労働力不足に対処するための一つの解決策となり得ますが、リーダーたちは、これが各地域における労働市場の改善につながるようにしなければなりません。あるいは、デジタルシステムへのアクセスを向上させ、別の場所にいる同僚とのチームワークが円滑になれば、人材のバリューチェーンをよりグローバル化することができます。そうなれば、現在生産年齢人口が増加しているにもかかわらず仕事が少ない地域であっても、より大きな雇用創出が可能になるでしょう。
雇用の転換と再配置
グローバルな雇用創出ニーズの高まり伴う最大の課題の一つは、国内、産業内における雇用の転換と再配置でしょう。この主な要因は、新たなテクノロジーや先端技術の導入とグリーン転換です。世界経済フォーラムの「仕事の未来レポート2023」によると、雇用主の半数以上がテクノロジーによって雇用が拡大すると予想しており、20%以上はテクノロジーによって雇用の転換が促進されると期待しています。また、国際労働機関(ILO)は、グリーン投資によって今後数年間で840万人の雇用が創出されると予測しています。リーダーたちは、こうした傾向によって生まれる新たな雇用が「良い仕事」であり、労働者が新しい役割を担えるよう支援する必要があります。
雇用市場におけるAIの変遷
AI(人工知能)や生成AIは、今後数年間で労働市場に大きな影響を与えるでしょう。特に、高度な分析を行い、オリジナルのコンテンツを作成し、人間に近い精度でタスクを実行する能力を持つ生成AIは、労働市場の新たな方向性を形成し、これまで想像もつかなかったような新しい仕事を生み出します。一方で、自動化のリスクにさらされる職務も出てくるでしょう。これは、求職者、雇用主、そして経済全般に新たな扉を開くものですが、政策立案者や雇用主は生成AIの導入が労働者と協議の上で慎重に行われるよう対応する必要があります。
雇用格差に対処し、経済機会を増大させ、新たな人材の就業を促進するために、リーダーたちは以下の行動を検討すべきです。
中小企業と起業家への支援
雇用創出が最も急務であるグローバルサウス経済では、零細・中小企業が雇用の70%を占めています。しかし、企業を立ち上げ、雇用を創出する企業へと成長させる道のりには多くの困難が伴います。中小企業の成長を支援することが、雇用機会を増やす鍵になるでしょう。一丸となって行動し、パートナーシップを発揮して起業家をトレーニングし、起業家とサプライヤー、市場、資金調達をつなぎ、起業を支援するエコシステムを構築することで、中小企業の成長とレジリエンスの獲得を支援することができます。
インフラへのアクセスと投資
交通や通信技術などのインフラへの投資は、新たな雇用機会を生み出すための条件整備に不可欠です。新たなプロジェクトの創出を通じて直接的な雇用創出が可能になるだけでなく、物理的・デジタル的なコネクティビティを向上させることで、雇用機会へのアクセスを増やすことができます。各国政府と企業は、持続的な価値を提供する雇用機会を促進するために、効率的、公平、戦略的かつ適切な投資を行い、新規プロジェクトをサステナブルなものにするために、投資計画に能力開発の要素を含めるようにすべきです。
国際貿易
国際貿易は、企業がより大きな市場に参入し、商品やサービスの需要を拡大することで、経済成長を促し、産業を活性化させ、グローバルな雇用創出の原動力となり得ます。需要が拡大すれば事業は大きくなり、地域の雇用が増加するからです。しかし、貿易は離職率の上昇や、場合によっては賃金の低下につながることもあります。各国政府は、貿易ショックの影響を受ける産業が、グローバル化した経済に対応できる労働者を育てる研修プログラムや、移行期に労働者を保護する社会的セーフティネットを利用できるようにすべきです。
アップスキリング、ニュースキリング、リスキリング、生涯学習
急速に変化する仕事の世界を背景に労働力のレジリエンスと適応力を確保するためには、労働者も継続的に学習することが不可欠です。アップスキリング(技能向上)、ニュースキリング、リスキリング、生涯学習を通じて、ヒューマンキャピタル(人的資本)を育成することは、労働者が産業の需要に応えられるようにすると同時に、新たな市場を強化し、インフォーマル経済からフォーマルな経済へ移行させ、サステナブルな開発を可能にする中心的な役割を果たします。しかし、質の高い技能訓練へのアクセスは限定されており、特に社会から疎外されたグループにとって、これは技能向上の共通障壁となっています。より熟練した、インクルーシブでエンパワーメントされたグローバルな労働力を育成する上では、このような障壁を取り除くことが極めて重要です。
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