労働市場の測定基準は、今や肩書ではなく「スキル」
他地域のための養成所と化した上海
Image: Reuters
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この記事はニュー・チャンピオン年次総会の一部です。
テクノロジーの進歩は、一方では仕事の自動化、他方では新たな仕事の誕生といった形で現代の労働市場を大きく変えています。この新たな現実に積極的に対応していくためには、こうした変化や、それが職や雇用にもたらす影響について深く詳しく理解していく必要があります。LinkedInのデータはスキルに基づいたアプローチを労働市場分析に取り入れ、この問題に新たな視点を提供してくれます。
スキルは労働市場の新しい通貨です。必要とされる専門知識と技能が目まぐるしく変化する「職業」と、ひとたび卒業してしまえば用済みとなりがちな「学問知識」。一方、「スキル」は、これらよりも精妙に需要と供給を表します。つまり、変化のスピードが速い今日、学位ベースの労働市場分析ではなく、もっと動的な変数であるスキルベースの方向へと移行する必要があるのです。スキルを分析の変数として使用することによって政策立案者は将来に向けた準備を行い、時代に対応するレジリエンスを構築していくための強力なツールを手に入れることができます。
これらの変化を元にLinkedInは、労働市場の動向をより精妙に理解するための分析を可能にする新たな測定基準として「スキルゲノム」を考案。6億3000万人を超える世界のメンバーと3万5千以上のスキルから生成されるデータでグローバル経済をデジタルで写し取ったのがLinkedInの「エコノミックグラフ」です。エコノミックグラフが提供するスキル関連情報を利用することで、労働市場の区分ごとのスキル特性を明確化して分析するほか、他の区分との比較により特定の区分で多く見られるスキルを見付け出すこともできます。区分には地理(例:都市)、業種、職種(例:データサイエンティスト)、人口グループ(例:女性)などが使われています。
例えば中国については、広東~香港~マカオ・グレーター・ベイ・エリア(大湾区経済圏)と長江デルタ経済圏という経済的に活発で開放度が高い2地域におけるデジタル技能の動態を分析しました。前者におけるデジタル経済と人材開発に関する報告書では、中国のグレーター・ベイ・エリアへデジタル技能を持った人材が流入してきていること、そして深圳がデジタル人材のハブとなっていることが分かりました。またグレーター・ベイ・エリアの人材は主に財務や技術分野を専攻していて、プロジェクト管理やリーダーシップといった汎用的なスキルを持っているものの、デジタル技能との統合度は比較的低いということも判明。そこでは高レベルの人材やデジタル系の人材でも経営、リーダーシップ、交渉などのソフトスキルのレベルも高いのです。
長江デルタ経済圏に関する同様の報告書でも、上海が多様なスキルを持つジュニアレベルの人材を養成・育成する形で他の地域を支援する重要な役割を果たしていることが分かりました。また、過去4年間で最も急速に成長した10のポストはカスタマーサービス、マーケティング、財務、生産、オペレーションなどの職務で、どれも中層・上層部とされている役職ばかり。最も急成長を遂げたスキルは (1) マーケティングやカスタマーサービスなどの職能的技能、(2)リーダーシップなどのソフトパワー技能、(3) ソーシャルメディアなどのデジタル技能、(4) 英語などの付加価値のある技能の4つに分類することができます。スキルの分類は、長江デルタ経済圏が世界への門戸をより広く開けていることと、デジタルの機会とより密接に結びつき始めているということを示しています。
社会が仕事の未来へ向かって準備をする中、このような調査結果はますます有用になります。政策立案者は、人気が落ちている職業で働いている人々の将来キャリア形成のためにこうしたスキルプロファイリングを利用したがるでしょう。教育や研修に従事している人々は、新たに発生したスキルの傾向に合わせてカリキュラムを調整していくこともできます。そして多様性が重要な目標となっていく中、様々なバックグラウンドを持つ人々のプロファイリングによって、格差を解消し障壁を緩和していく努力を後押しすることができます。
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