ダボスで開催される世界経済フォーラム年次総会について知っておくべき7つのこと

世界が多くの危機に直面している今、2025年の世界経済フォーラム年次総会は、対話の必要性を再確認する機会となるでしょう。
Image: 世界経済フォーラム
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グローバルリスク
- 「ダボス」は、ヨーロッパで最も標高の高い町であるだけでなく、世界経済フォーラム年次総会の代名詞でもあります。
- 毎年1月に開催される本会合について、解説します。
- 2025年の年次総会は、1月20日から24日まで開催されます。
ヨーロッパで最も標高の高い町、ダボス。世界経済フォーラムの年次総会がスイスのこの町で開催されるようになって以来、「ダボス」は、同会合の代名詞となっています。
世界経済フォーラムの年次総会には、各国政府、企業、市民社会のリーダーたちが一堂に会し、リーダーたちが世界をより良い場所にするために取り組むべき課題を議論します。
グローバルな集いの場としての重要性は、公式プログラム枠の内外にもあります。対話の重要性は、非公式な会話の中でこそ明らかになることが多いもの。「世界の安定を脅かす要因が増加」している状況下でリーダーたちを集めることは、かつてないほどに重要な使命なのです。
50年以上続く同年次総会は、「ダボスの精神」を体現しています。この精神は開放性と協力の姿勢であり、同フォーラムの使命の核心をなすものです。1973年に作成され、2020年に改訂された「ダボス宣言」は、ステークホルダー資本主義の原則、すなわち企業が共有する目標の体系を定めています。
ダボスで開催される年次総会について、よくある質問をもとに、7つのポイントを解説します。
1. 年次総会のプログラムはどのように構成されているのか
年次総会のプログラムでは長年にわたり、世界が直面する、進化する課題に焦点を当ててきました。例えば、気候変動は毎年取り上げられる課題。また、インクルージョン、ダイバーシティ、そして誰もが満足できる経済発展のあり方といった課題も取り上げられてきました。
会合では世界で最も差し迫った課題に対処するための行動につながる議論をするため、パンデミックへの備え、リスキリングから、グローバル経済状況、エネルギー転換といった、毎年異なる様々な課題についても議論します。
また、同フォーラムは毎年1月の年次総会に先立ち、「グローバルリスク報告書」を発表。年次総会が開催される前に、議論の基盤となる、差し迫った、あるいは長期的な重大なグローバルリスクを特定・分析しています。
現在、年次総会のプログラムには300以上のセッション(そのうち200は世界中の視聴者に向けてライブ配信)が含まれており、進歩を加速させ、グローバルな課題に取り組むことを目的としています。同フォーラムは、各センター(部門)を通じて、年間を通じてさまざまな取り組みを継続して行います。

2. ダボスで政策が形成されるのか
ダボスで開催される年次総会は、パブリックセクターと企業の意思決定者が一堂に会し、今日の主要問題について話し合うための「プラットフォーム」です。一方で、会合がビジネスパートナーシップや政治的進展につながることもあります。
例えば1988年には、ギリシャとトルコがダボスで最終合意に達し、武力衝突を回避しました。続く1990年代には、南アフリカのアパルトヘイト廃止につながる「握手」がダボスで実現。また、企業に対して人権原則に沿った事業運営を求めるイニシアチブである国連グローバル・コンパクトの発表の場ともなりました。さらに最近では、2023年に米国が同会合において新たな開発基金プログラムを発表し、出席した世界のCEOたちがアフリカにおける自由貿易協定を支援する計画を支持することで合意しました。
年次総会は喫緊の課題の解決をめざしたプラットフォームを提供しますが、世界経済フォーラム自体は政策決定者の決定や発言に影響を与えることはなく、公共政策の方向性に関与することはありません。

3. 年次総会の開催地は例年ダボスなのか
2001年の9月11日の同時多発テロ事件を受け、2002年には現地の人々との連帯の意思表示として米国ニューヨークで年次総会が開催されました。
新型コロナウイルスが猛威を振るった際には、2021年と2022年の年次総会を「ダボス・アジェンダ」として完全にデジタル化して開催。2022年の対面での年次総会は、ロシアによるウクライナ侵攻の対応を優先するため、2022年5月に延期されました。
2023年1月には通常の開催時期である冬に戻り、慎重に講じられた衛生対策の下、3年間にわたるグローバルなパンデミックの終息の始まりを告げるものとなりました。

4. ダボスで開催される年次総会には誰が出席するのか
年次総会は招待制の会合であり、各国の国家元首や企業のリーダーたち、そして市民社会やアカデミアを代表する多くのエキスパートが一堂に会します。
出席者は、様々な政治的見解を有する政治家たち、企業における変革者たち、様々な専門分野の第一人者をはじめ、活動家、芸術家、労働組合のリーダーたち、先住民コミュニティのメンバーたち、そして著名な若者たちも含まれます。
また、一般市民は世界中どこからでも、ライブストリーミング配信のセッション、ソーシャルメディア、同フォーラムのグローバルなハブ、センター、プロジェクトへのバーチャルな接続を通じて年次総会を視聴し、参加することができます。

ダボスで開催される年次総会は、エリートたちが集まる会合として批判を浴びることがありました。しかし、そういったいわゆる「ダボス参加者」というステレオタイプはもはや過去のものです。これは同会合が「ソーシャル・インクルージョンと環境保護主義」に関する課題に重きを置くようになっているからです。2024年には、同フォーラムの次のようなコミュニティを含む参加者が、125カ国から集結しました。
- インターナショナル・ビジネス・カウンシル、コミュニティ・オブ・チェアパーソンズ、インダストリー・ガバナーなどのイニシアチブならびにコミュニティに積極的に参加する、同フォーラムの1,000社余のパートナー企業の最高経営責任者および会長。
- G7およびG20諸国をはじめとする世界各国のパブリックフィギュア(公人)と国際機関の代表者。
- 市民社会、労働組合、メディアの主要組織のリーダーたち、思想家、学者。
- グローバル・イノベーターズ、やテクノロジー・パイオニア・コミュニティ、グローバル・シェイパーズ、ヤング・グローバル・リーダーズ、社会起業のためのシュワブ財団などのコミュニティのメンバー。
2005年に発表された同フォーラムの「グローバル・ジェンダー・ギャップレポート」に沿って、年次総会はジェンダー平等を目指すプラットフォームとなるよう努めています。近年では、出席者の4分の1を女性が占めており、これは世界のリーダーやビジネスリーダーたちの割合よりも高い数値です。
2018年、会合における共同議長の全員が女性でした。また、共同議長を務めた女性全員によるパネルディスカッションを初めて実施。#MeToo運動の衝撃が広がる中で力強いメッセージを発信しました。
2025年には、セッションにおけるモデレーターの男女比をほぼ同等にすることを目標としています。
「グローバル・ジェンダー・ギャップレポート」は、世界で最も綿密に分析される年次ベンチマーク調査のひとつとなっており、同フォーラムでは、各国でタスクフォースの数を増大させ、政府や企業と協力しながら、男女比の同等化に向けた進展を加速させています。
5. 世界経済フォーラム年次総会の始まりとは
1971年にクラウス・シュワブ教授によって創設された当時の欧州経営シンポジウム(EMS)が、最初に会合を開催したのがダボスでした。
出席者は、同教授が提唱した「ステークホルダー理論」について議論しました。これは、企業は株主だけでなく、従業員、サプライヤー、より広範なコミュニティを含むすべてのステークホルダーに奉仕すべきであるというビジョンです。今日、ステークホルダー資本主義は、同フォーラムの指針となっています。
1973年には、年次総会でビジネスリーダーたちのための倫理規定である「ダボス・マニフェスト」が承認されました。2020年に更新されたこの文書には、第四次産業革命におけるビジネスの目的が定められています。「第四次産業革命」とは、シュワブ教授が2016年の著書で生み出した概念です。
1974年に初めて政治家が年次総会に招待され、1987年、EMSは世界経済フォーラムへと進化。官民連携により、その時々の喫緊の課題に対処するためのプラットフォームを提供するという、より幅広い目的を持つようになりました。

6. 年次総会とサステナビリティとは
同フォーラムは気候危機の深刻さを認識しており、年次総会の持続可能性を高めるために最善を尽くしています。
2017年以降、年次総会に関連するすべての二酸化炭素排出量が計算され、スイスおよび海外の環境プロジェクトを通じて相殺されています。また、エネルギー消費量を制限しており、会合では再生可能エネルギーのみを使用します。
さらに、廃棄物の削減にも取り組んでいます。こうした取り組みには、再利用可能な資材の使用、使い捨てプラスチックの排除、地元団体との協力による未使用の資材や食べ残しの配布などが含まれます。
年次総会における二酸化炭素排出量の主な要因は、依然として交通手段です。そのため、同フォーラムでは出席者に最も環境に配慮した方法での移動を推奨。ヨーロッパ在住の出席者が列車を利用した場合、全額を負担しています。
年次総会はまた、気候変動に関する研究結果を発表し、気候変動に関連する多くの差し迫った課題について警鐘を鳴らす機会にもなっています。2019年の年次総会では、英国のデイビッド・アッテンボロー卿が「新たな地質年代」について力強いスピーチを行い、2023年には米国のジョン・ケリー気候問題担当大統領特使が「産業革命以来、最大の経済的変革」を呼びかけました。
年次総会における持続可能性への取り組みについて、詳しくはこちら。

7. 世界経済フォーラムの年次総会以外の会合について
年次総会に参加する各国政府、企業、国際機関の多くは、年次総会の会場以外でサイドイベントを行います。そうした場(夕食会、レセプション、展示会、業界ミーティング、二者間協議など)は、主催団体が資金提供し企画・運営されます。
世界経済フォーラムは、年次総会開催の週にダボスで実施される多くのサイドイベントには関与していません。
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